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  • 2014.03.18

【ライヴレポ】サカナクション、“踊れるロック” の牽引者が提示した “その先にある何か”

サカナクションが15日、TOKYO DOME CITY HALLでライヴを行った。シングル「グッドバイ/ユリイカ」を引っさげて1月18日よりスタートさせたツアー『SAKANAQUARIUM 2014“SAKANATRIBE”』の追加公演1日目。“踊れるロック”の牽引者は、確かなる個性と存在感を観せつけた。

■現実や生活、孤独、終わり、それでも生きる覚悟が宿っている音楽

開演前、ステージの奥に設けられたスリーンには渋谷などの都市を切り取ったモノクロ写真と、花や葉を写した色鮮やかなカラー写真が交互に映し出されている。それを見詰めるのはスタンディングのフロアでギュウギュウにひしめくオーディエンスと1階〜3階の席の前に立つオーディエンス。彼ら彼女らの高揚感が膨れあがったその時、ゆっくりと電気が消えてゆき、暗闇が訪れる。そしてスッと、メンバーそれぞれの立ち位置にスポットライトが降りる。岡崎英美(Key)、草刈愛美(B)、江島啓一(Dr)、岩寺基晴(G)が姿を現す。少し間を空けて登場した山口一郎(Vo&G)は深く観客に一礼をすると指揮者のようにメンバーの方へ振り返り呼吸を一つにして音を出し始める。

それは静寂を伴った演奏だった。曲は「サンプル」。静かに鳴るエレキギター、重なっていくキーボード、ベース、ドラム。息づかい、心地よい緊張感、音を奏でる喜び……プレイに宿る繊細なニュアンスが伝わってきて、聴いていてふつふつと心の奥底がたぎるのを感じ始める。と、一気に演奏のヴォリュームが上がる。ドッと観客が跳ねる。“息をしていた”……山口が歌うフレーズが胸に刺さる。流れを加速させるべく、ドラムカウントから続いた「アルクアラウンド」では岩寺と草刈が前に進み出てプレイする。メンバーと観客が軽快にクラップし、この快楽を伴った時間を共有しながら深く繋がっていく。「セントレイ」では岡崎の弾きだしたスリリングなフレーズがそんなオーディエンスを更に煽り立てる。イントロが鳴った瞬間にひときわ大きな歓声が湧き起こった「表参道26時」。サカナクション流シティーポップに、会場に漂う空気が温かくなる。

こうして“今”のニュアンスを注ぎ込まれ、聴く者を突き動かす力を持って轟く初期の楽曲たち。そこに色褪せることなく息づくメロディと感情の存在に気付く。照明が消え、訪れた暗闇の中で水音が鳴り始まった「シーラカンスと僕」。2010年発表の曲だ。落としたテンポの中、丁寧に歌を紡ぐ山口をレーザーの光が包む。そして、ステージ奥のスクリーンに青い模様が映し出される。曲が進み歌が力を帯びていく。合わさった楽器が共鳴して大きなウネリを作る。“深い夜”を“深海”にクロスさせ、どこかへ泳いでいこうとする意志、僕のままあり続けられますように、という祈りが迫ってきて心を泡立たせていく。「流線」では、演奏の展開に合わせて、青く蠢いていた映像が赤に浸食されドキリとさせられた(この映像はリアルタイムでなされるオイルアートを映したもの)。

スクリーンにモノトーンな東京が映し出される。「流線」の余韻が残る中、極限まで音要素を削ぎ落としたダンサブルなサウンドが響く。新曲「ユリイカ」。クールな音に反応したフロアでは沢山の手が挙がり揺れている。曲が後半に向かい、草刈が体を揺すってリズムを生み出している。どうしようもなく“いつか終わる”ことを感じている曲だ。その曲に僕たちは突き動かされ、踊る。サカナクションの音楽には、現実や生活、孤独、終わり、それでも生きる覚悟が宿っている、と思う。それらのいくつかはこの5人の音楽に共鳴する人たちにとって、日常で抱えている感情そのものだろう。そんなすべてを内包しながら踊る。たとえこの瞬間哀しみを抱いていたとしても、自分を自分で騙して踊る、忘れたふりをして踊る。“その先”に何かがある。それは“踊れるロック”“ダンスミュージック”の一つの本質でもあると思う。

■目の前に広がるとてもピースフルな光景

ライヴは一秒一秒、熱を増し、“その先”に向かって進んでいく。「三日月サンセット」の少しハネたグルーヴは心地良く、なんといっても「アイデンティティ」から「ルーキー」への流れは秀逸だった。「アイデンティティ」で会場にいる全員が挙げた手を大きく左右に振り、その果てに訪れた“繋がった”という手応えの中、岩寺と草刈がフロアタムを叩き、テンションをさらに上へと押しやる。レーザー光線が飛ぶ中、「ルーキー」を山口が高らかに歌う。そしてオーディエンスが高く跳ねる。目の前に広がるその光景をとてもピースフルだ、思う。そして、この確かな温かさは“その先”にあるものの一つではないか、と感じていた。

アンコール。ステージのセンターに置いたDJブース前に5人で並び、フェーダーやツマミを調節したり、時に楽器を鳴らして、リアルタイムで「Ame(B)-SAKANATRIBE MIX-」をリミックスして楽しませる。そして、「Aoi」。この幾重にも合わさった声による重厚な響きは賛美歌のようにさまざまな感情を昇華してくれるように思えた。

その後、山口はこの日始めての長いMCをする。ここで彼はこのライヴという場所を「ホーム」と表現し、新しくファンになってくれた人に「この場所を経験してくれたら」と口にした。

サカナクションの根底にあるもの、彼らが音楽を産み出す意味、それは共に感じ、共に踊った先に飛来する感情の中にある。
会場では山口の奏でるアコースティックギターが響いている。“敢えて歌うんだ”。彼の想いが反響する。彼らはこれからも、すべてを抱え、不確かだと知る未来へ、それでも進んでいく。

写真/石阪大輔(hatos) 文/大西智之

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サカナクション公式サイト
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