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  • 2015.07.24

映画『新宿スワン』の関玄介役で大注目!園子温作品に欠かせない俳優・深水元基の魅力とは

■ただのコワモテ俳優ではない!?観る側に余韻を残す引き算の演技

今年5月に公開された映画『新宿スワン』。人気コミックの実写化は、往々にして原作ファンからは厳しい目で見られがちだが、この作品は、各キャラクターが原作と見事にシンクロしていると評判になりヒット。とりわけ、スカウト会社「バースト」の幹部、“狂犬”と呼ばれる男、関玄介を演じた深水元基の芝居は、原作とのシンクロ率はずば抜けて高く、他の俳優目当てや原作好きで観に行ったファンからも“この俳優さん誰?”とSNSなどで話題に。一躍、“憑依型俳優”として注目を集めるようになった。

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彼の経歴をみると、劇団出身で演技を研鑽した、というわけでも、子役の頃から現場を積み重ねてきた、というタイプでもない。学生時代に『MEN’S NON-NO』(集英社)や『Smart』(宝島社)など、ファッション雑誌のモデルとして活躍し、2000年にドラマ『らぶ・ちゃっと』(フジテレビ系)で俳優デビュー。一般に知られるようになったのは、映画『クローズZERO』(2007年)のリンダマンこと林田恵役で、あの“フードをかぶった大男”の存在感で強い印象を残した。その只者ではない雰囲気は、後の映画『ガチバン』シリーズで見せた城島秀人や『新宿スワン』での関にもつながる“コワモテ”深水元基としての系譜だ。

しかし、彼の役者としての凄味は“コワモテ”だけではない。NHKのコント番組『サラリーマンNEO』で見せたごく普通の若手サラリーマン役など、何気ない役柄をさらりと演じ切る姿は、安定感を感じさせる。現在公開中の映画『ラブ&ピース』でも、長谷川博己演じる主人公・鈴木良一の同僚サラリーマン役として、少し嫌味で少しバカっぽい男をまっすぐに演じている。映画やドラマにおける、スッと見過ごしても問題のなさそうな役はスッと、スッと感だけではなく、ちょっと引っかかりを残す気になる存在の時はわずかに爪跡を…と、観る側に嫌味にならない範囲で印象を残していく。

■役者人生に大きく影響を受けた園子温監督との出会い

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そんな彼の真骨頂ともいえるのが、園子温監督作品での“ありよう”だ。物語の中心人物からワンポイントまで様々な形で出演。テレビドラマも含めると、出演した作品は軽く10作を超え、園組には欠かせない存在となっている。映画『恋の罪』でのAV男優・マティーニ真木のでたらめさは、強烈なインパクトを残し、『希望の国』で演じた主人公の同僚・新井が、主人公夫婦の行動を嘲笑う姿は醜悪でありながらも、自分もそうであるかもしれないと思わせるリアル感が印象的だった。また、『みんな!エスパーだよ!』の高校生役・榎本先輩は一気にバカバカしいカオスに引きずり込む。各作品、世界観も役柄も実に幅広いため、エンドロールのクレジットを見て、“これも深水さんが演じていたんだ”と後から言われることも多いそうで、その言葉は何よりうれしいと話していた。

笑い満載の作品から社会派作品まで振り幅の大きい園監督作品だが、その共通点は“ライヴ感”だと、深水本人は語る。とくにそれを強く感じたのは、園監督作品初参加の映画『HAZARD』(2002年)と初主演作『気球クラブ、その後』(2006年)。街中で「拳銃を持ってそのまま走ってくれ」と指示されるなど、ドキュメンタリーのように、その場で起こったこと、起こしたことが撮影される手法の虜になり、「これが映画の楽しさなんだ、と知った」と言う。「現場に行かないと、わからないことだらけ(笑)」という“ライヴ感”の中で培われたのが、凝り固まらないけど流されない、深水元基ならではのオリジナリティ、なのかもしれない。

初めてインタビューをしたのは、『インディゴの夜』という昼ドラ撮影時。彼が演じたアレックスは、ハーフで英語と日本語を掛け合わせて話すマッチョな男だった。この時、役のために筋トレを開始し、体を大きくしたという話をしている。『新宿スワン』の関玄介に挑むときも体を一回り大きくし、ビルドアップ。一つの役に向き合うストイックさに驚かされた。また、『新宿スワン』の撮影前には、役になり切るために、原作コミックの関玄介のページを拡大コピーし、部屋の壁に貼りまくったという。これは『クローズゼロ』のリンダマン以来の行為だったとか。我々は “憑依型”と簡単に言ってしまうが、そこには、肉体の形として作り上げていく側面と、気持ちからその役を染みこませようという丁寧な準備があるようだ。

俳優として次々に新しい作品に挑む彼だが、オリジナルブランドmonteeではディレクターでもあり、デザインも手がけ、プライベートでは数多くの名山に挑む登山家の顔も持つ。『新宿スワン』公開前の取材で、作品にちなんで“新宿での思い出は?”と聞いたのだが、「いや、これ言っていいのかな?実は新宿はあまり行かない場所なんです。ちょっと怖いイメージがあるじゃないですか」と、少し意外な答えを返してくれた。俳優として“コワモテ”だけでないのは知っていたが、どうやら、プライベートもさらにいろいろな表情を見せる多面的な人物のようだ。そんな彼の役をこなしていく度に、誰よりも作品に馴染みながらも後からじんわり余韻を残す演技から目が離せない。

文/田部井徹

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